リサイタルのご報告 前編

2016-10-03T23:01:47+09:002016/10/03|

一昨日のリサイタル、大盛会のうちに終了することができました。 ご来場いただきました皆さま、そして、ご協力いただきました皆さまに心から御礼申し上げます。 今はただただ感謝の気持ちでいっぱいです。本当に本当にありがとうございました。   1年半前にホールを予約し、1年をかけて準備してきました。 私のこのリサイタルのために惜しみなくご協力してくださる方々、楽しみにしてくださっているお客様、、、なんて幸せなんだろう!と感激しながら、そのお気持ちに応えられるだろうか。という思いが錯綜し、この1ヶ月は自分の体調や音楽にピリピリ神経質になっていました。 楽器の調整、自分自身の手や体調の調整で想定しないことが起こると混乱してしまったり、作曲に関しては完成の線を引けずどうしようと頭を抱えたり、気持ちのアップダウンをどう制御していいかわからなくなることもありました。 最高の演奏をしたい!これしかないという音を出したい!それだけが頭の中をかけ巡っていました。 いくら練習を重ねても当然のことながら満足できず、当日を迎えました。 楽屋口で、和歌山から到着した生徒さんと東京教室チームが合流。わあ!!!と、一気に安心感に包まれます。桐蔭高校OGの大学生たちも無事到着!よかったよかった。 そして、舞台裏へ移動。 まもなく共演者の方々が続々到着。ちゃんと支えますから思う存分自由に弾いてください。という空気が伝わってきて、大舟に乗った気分にしてくださいます。 舞台では制作スタッフが舞台の準備を着々と整えてくれています。やっぱりいい響きの素敵なホールだなあ。きっと私の音を助けてくれる! どうかよろしくお願いします!とホールにお祈り。 生徒さんたちは、いつものおさらい会での過酷な裏方に慣れているため(笑)、指示がなくてもそれぞれが行動開始! 楽器の下準備はあっさりと終え、充実したドリンクコーナーがあっという間にできあがり、調弦の体制も万全!私の衣装のアイロンがけから着物の準備まで終了! 午前中は、「久遠の大地」の練習。

箏の不思議と素敵な仲間

2016-09-28T23:06:25+09:002016/09/28|

ブラジル音楽・ショーロのリハーサルはいつも和やか。 シェンさんはじめ田嶌さん、栗山さんはいつもブラジルの香りを運んでくださいます。おおらかで包容力があって、爽やか。それもこれも余裕があるからこそ! 音楽することが普通に生活すること。そんな空気感がとても素敵。 ブラジルでは、音楽と体育の授業がないそうです。サンバやボサノバなど素晴らしい音楽が満ちていて、サッカー王国なのに?と驚きました。でも、きっと生活の中に普通にあることだからわざわざ学ぶ必要なんてないんだなあ。と納得したのでした。沖縄も同じような感じです。みんな音楽は生活の一部だから、演奏することに緊張もしないし、誰もが歌って踊れる。本当に素敵だなあ。と思います。 私の箏のアレンジは、通常のコード進行無視。にもかかわらず、シェンさんも田嶌さんも栗山さんも、本来ならぶつかるところを「それおもしろいね!いいよ👍!」と新たな工夫の種に変えてくれるのです。 ニューヨークでジャズを勉強している友人が、「ブラジル音楽のハーモニーの感覚は先の先で調和するようなすごいものだけど、それを普通に即興でできちゃう感覚は信じられない。」と言っていました。 だからこそ変則的なことを拒否せず、スパイスにしてしまう! 「技」とはこのことですね。 ともかく、箏の音は響きが読めない! 西洋音楽で不協和音といわれるハーモニーが箏では心地よくて、ハモるはずの和音がなんだか濁っていると感じることが多々あります。西洋音楽の理論がそのまま箏にはあてはまらないと思いますし、雨や波の音、木々のざわめきや虫の声など自然の音はけして協和音ではないけれど安らぎを感じますから、やはり箏は自然の音に近いように思います。 楽器の木目、年齢、糸締めの強度、爪の厚さ・かたち、環境、その組み合わせによって箏の音は大きく変わります。弾きながらそれぞれの曲との相性を考え、選んでいきます。リサイタルに向けて今その作業の真っ最中。 本番はもちろんまた条件が異なりますけど、準備は大事! 箏に触れてから48年も経ったというのに、やっぱり箏は不思議。神秘です。 今回私が演奏する楽器はこの3面。 そして、やっぱり箏も休養(睡眠?)が必要なのです。油單をかけて『おやすみなさい。また明日!』    

感謝の気持ち

2016-09-25T23:40:54+09:002016/09/25|

今日は、神田さんとの2回目のリハーサルを終え、シェンさんもサンパウロから無事到着!明日はショーロ(ブラジレイリーニョ&カリニョーゾ&チコチコノフバー)のリハーサルです。これでリハーサルはすべて終了。いよいよ本番です! 15年ほど前、演奏することに行き詰まったとき、作曲家の高橋悠治さんを訪ねて行ったことがありました。 私の発言はポツポツ・・それに対して、悠治さんは「それで?」「だから?」という風で、心の奥にどんどん踏み込んで核心に向かっていくような感じでした。 最後に、「どういう気持ちで音楽をしているの?」と聞かれ、私はなかなかことばにすることができませんでした。 ようやく「感謝と・・・」とつぶやいてまだ他に何かを探していると、悠治さんは「感謝だけじゃいけないの?感謝だけでいいじゃない。」と言ってくださいました。 自分の中の何かがすとんと落ちたような気がしました。『そうだよね。それしかないよね。それでいいんだよね。』 ずっと思っていたけれど、隠れて見えなくなっていた大切なもの。 今もその気持ちは変わりません。 感謝の気持ちを届けるリサイタルに!   ↓ 亡き親友がプレゼントしてくれたかえるのマグネットです。いつもこうしてそばで練習を見守ってくれています。 ありがとう。        

エピソード「久遠の大地」

2016-08-31T23:50:31+09:002016/08/31|

気がつけば今日で8月は終わり、明日からは9月!バタバタしているうちにリサイタルまであと1ヶ月となりました。 練習や曲作り、リサイタルの準備に忙しくすごす日々の中で教室の生徒さんや桐蔭高校箏曲部の高校生たちとすごす時間は至福の時です。ニューヨークのコロンビア大学の客員研究員になった2010年までの24年間月に一度の和歌山レッスンを休んだことは一度もありませんでした。皆勤賞!(笑) 8月は毎年教室のおさらい会を和歌山で開いています。今年も8月7日に行いました。いつも司会原稿はすべて私が作成します。曲目紹介とともに曲に対する思いや一年であったできごと、その人の個性などをまとめた文章です。それがあって、お客様も徐々に固定ファンとなってくださり、教室生の方のことをひとりひとり覚えてくださっていたりして、会場はとても和やかでいい雰囲気です。 私にとって教室の方はみんな家族だと思っています。年に1回おさらい会のために結成されるこども音楽隊は幼稚園から小学生のこどもたち、そして最高齢の方は80代。箏の上では先生だけれど、箏を離れれば人生の先輩だったり、同年代の女子仲間だったり、若い後輩だったり、かわいいこどもだったり・・・。大家族ですね。 10年、20年、30年と一緒にすごす間にはもちろんすばらしく幸せなこともあるし、つらいできごともあるけれど、箏の合奏をするときは年齢の壁もなく、ただただ楽しい!休憩時間にはお菓子を持ち寄りワイワイガヤガヤ。みんな笑顔になります! 一緒に年齢を重ね、生きていける仲間がいることは幸せであり、支えです。 おさらい会は準備も練習も大変、緊張もするし体力も要るけれど、みんなにとって元気の素なのです。打ち上げは充実感いっぱいで最高の気分ですよ! リサイタルではそんなみなさんと一緒に「久遠の大地」を演奏します。 ブラジルに初めて行ったときに感じたのは「なつかしい日本」。移民として渡られてご苦労された日系の方々のあたたかさと凛とした生き方に尊敬と感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。今年もリサイタルが終わって11月にまたブラジルに行く予定です。なんと!私の30周年の記念リサイタルを開催する計画をしてくださっています!(感激!) 想像を絶する苦しい生活の中で、地球の反対側にある遠い遠い故郷を思って爪弾かれた箏。 ヘリコプターから見たアマゾンの森はどこまでもどこまでも蒼く、白い息を吐いて呼吸していました。 そして、あらゆるものを許容して気高くたくましく生きる朗らかな人たち。 ここで出会った方々と一緒に演奏したい。この思いを曲にしてほしい。という気持ちで2012年江戸信吾さんに委嘱しました。初演はサンパウロで。 私は箏を時々抱き締めます。そうするとすごく安心するんです。きっとリサイタルの前日も、本番前もそうやって箏を抱きしめていると思います。 大好きな人たちと大好きな箏を弾き、大好きな人たちに聴いていただける!その幸せをかみしめながら、あと1ヶ月精一杯力を尽くします!    

エピソード「箏と打楽器のための練習曲No.1」

2016-08-19T23:30:37+09:002016/08/19|

リサイタルご案内の後、8月7日(日)に和歌山で私の教室のおさらい会、続けて8日、9日は和歌山県立桐蔭高校箏曲部で夏のスペシャルイベントがありました。どちらも毎年恒例の大切な行事です。 おさらい会は、今年も生徒さんたちの熱演と応援してくださるお客様の温かい拍手に包まれ素敵な演奏会になりました。そして、桐蔭高校箏曲部のみんなもイベントを通していろんな発見があったことと思います。(桐蔭高校のHP http://www.toin-h.wakayama-c.ed.jpにその様子が掲載されています。) そして、気がつけば、リサイタルまであと1ヶ月と10日! 先週は藤原道山さんと、今日は神田佳子さんとリハーサルでした。 リサイタルでは、神田佳子さんの作品「箏と打楽器のための練習曲No.1」をデュオで演奏します。今日はリハーサルの後、久しぶりに一緒にお食事をして、思い出話や音楽、活動の話で盛り上がりました。この作品の初演は1999年(20世紀!)。箏でこんなことができるなんて!!!と衝撃を受けました。楽器の演奏法もアクロバティックで驚きですが、なんと!日本の伝統的なチューニングからあの有名なピアノ曲が飛び出すのです!今もこの作品を超えるサプライズピースはありません。 神田さんは先生、私は生徒という設定で、ユーモアたっぷり! カーネギーホールでの公演でもニューヨークのパーカッショニスト、ヴァレリー・ナランジョさんとこの作品を演奏しました。客席から、時には笑いが漏れ、時には歓声が上がりました!(写真をご紹介したかったのですが、アップできませんでした・・・。慣れなくてすみません。またいつかアップします) 是非是非お楽しみに! 追伸:神田さんがツィートしてくれています。(今日の練習風景写真付き!)              

リサイタル開催!

2016-07-15T14:21:05+09:002016/07/15|

本当に本当にご無沙汰してしまいました。申し訳ありません! このたび久しぶりに東京でリサイタルを開催することになりました。これを機にHPもリニューアルし、甦らせていきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いします。 今年で音楽活動を開始してからちょうど30年になります。少し立ち止まってこれまでの活動を振り返り、これからの出発点としたいという思いでリサイタルを開きます。プログラムはこれまでに新たな世界へ踏み出すきっかけを与えてくれた曲をたどる構成です。もはや古典ともいえる宮城道雄作品にはじまり、恩師・沢井忠夫先生の代表作、昭和を代表する現代曲、私の家族同然の生徒さんたちとのコンチェルト、友情を育んできたブラジルの美しく躍動的な音楽、箏のこれまでの技術を超えた新たなテクニックを駆使したユーモアあふれる打楽器とのデュオ、語りと歌・現実と非現実の間を漂う箏歌、そして最後には私自身の作曲による新作に挑戦したいと思っております。 箏を携えて未知の世界へ!見たことも聞いたこともない音、人、場、そして自分自身との出会いを求めて旅は続きます。 是非是非お運びください!   西陽子 箏リサイタル 〜夢を織る手〜 2016年10月1日(土)18:00開演(17:30開場) 浜離宮朝日ホール(朝日新聞東京本社新館2階)http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/   出演:西陽子(箏) 賛助出演:藤原道山(尺八)、神田佳子(パーカッション)、シェン・響盟・ リベイロ(フルート・尺八)、田嶌道生(ギター)、栗山豊二(パーカッション) 友情出演:芦垣皋盟(尺八)、辻本好美(尺八) 箏群:西陽子箏曲教室生、和歌山県立桐蔭高校箏曲部卒業生

楽しかった・・・そして、すべてに感謝③

2011-12-13T18:54:31+09:002011/12/13|

最後の曲に行く前に、NINA Duo の南部やすかさんをご紹介しましょう。 プロフィールは彼女のHPをご覧になっていただくとして、私と彼女との大きな違いは、まず、年齢(笑)。 彼女はアメリカでの生活を経てドイツ留学。6年ほど前に日本にやってきたばかり。もちろんきれいな日本語を話されますが、英語の方がしっくりくるそうです。 そう、彼女のベースはアメリカで、私は、ベースも何も生粋の日本人! 話はやや逸れますが、ニューヨークに来てからというもの、こういうときにはこういう反応が返ってくるという予想は悉く裏切られ、日本で「常識」とか「普通」と思ってることはあっさり崩されました。「否、そんなはずはない。おかしい。普通はこうでしょ?・・・。」と思ったところで、誰も立ち止まってもくれないし、振り向いてもくれないし、気が付いたら不平不満の塊は道行く人に踏みつけられてぺしゃんこにつぶれているというような感じです。 それを繰り返していくうちに、小さな社会でどうでもいいことに心を無駄に悩ませていたなあ。とか、これだけは何度踏みつぶされても守る!と思うことに集約されていくのです。 でも、アメリカから日本の社会に入ることになった南部さんはきっとその何倍も大変だったことと思います。 アメリカではいろんな人種の人たちが一緒に暮らしているから、価値観が違って当たり前。だから、わからないことや違うと思ったことは、全部ことばではっきりと伝えなければなりません。それが普通だから、どんな違った意見を言おうと、「逆らった」とか「ずうずうしい」とか「分をわきまえない」とかいうことにはならないわけです。変な感情は後に残らないし、「空気を読む」なんてありえません。何か言わなければ何も始まらないし何も進まない。私にとってはどれだけ勇気が要ったことかしれません。どちらがいいとかではなくて、そういう文化なのです。 それでも、アメリカに来れば私も「外国人」。少々ずれていようがめちゃくちゃであろうがまわりも大目に見てくれるし、なにより私の中で、外国人だからわからなくて当然という開き直りができたことは大きかったです。 南部さんは日本人のお顔をしているから、日本にいれば、まわりの人たちは自分たちと同じ価値観を持っていると思いこむでしょうし、たぶんなんとなく居心地が悪く、違和感を抱えてらっしゃったのではないかなと思います。私の勝手な想像ですが・・。 彼女が見る日本は、外国人が見る日本でもなく、いわゆる日本人が思う日本でもないわけです。 どんな風に見えているのだろう? ふたりの共通点はいろんな音楽が好きなこと。古典も現代曲も、リズムがあってノリのいい曲も、情熱的な曲も、おだやかな優しい曲も・・・。 「吹く」ということだけに無心なことが、彼女の透明感のある音や音楽の魅力の元だと私は思います。 日本でもNINA

楽しかった!②

2011-12-11T00:18:26+09:002011/12/11|

前半のプログラムは、 ●上弦の曲(沢井忠夫作曲)筝&フルート ● Air (武満徹作曲)フルートソロ ●月夜の海(西陽子作曲)十七絃ソロ ● Spice (名田綾子作曲・世界初演)筝&フルート 出番直前はやっぱり緊張。それでも舞台で一音出した瞬間に、「演奏できて本当に幸せ。」というシンプルな気持ちでいっぱいになったのです。 「上弦の曲」は、波に乗って。「月夜の海」は、自分のオリジナル曲ということもあるし、十七絃の深い低音の響きに心が落ち着き、「Spice」はリズムに乗って楽しく演奏できました。 休憩は15分。でも、私にとっては貴重なチューニングタイム。 いろんなタイプの曲を演奏する時には、筝の場合、チューニングの作業が待っており、海外では1面の楽器ですべてを演奏しなければならないことも多いので、その準備で舞台に立っている時よりもよほど必死で殺気立っています。時間を気にしつつ、耳を集中させ、段取りを考えながら・・・。汗だくです! さて、いよいよ後半。チョコレートを一粒と水分補給!これじゃまるでスポーツ選手?(笑)(そういえばお化粧直す時間もなかった・・。) 後半プログラムは ●春の海(宮城道雄作曲)筝&フルート ●筝と打楽器のための練習曲No.1

楽しかった!①

2011-12-08T14:29:40+09:002011/12/08|

カーネギーホールでのコンサート、大好評のうちに終えることができました。 応援してくださった皆さま、本当にありがとうございました。 コンサートを終えてここ3日間は、ひたすら寝てばかりで、こんなにも寝られるものなんだ・・と自分でも感心するほどでした。すぐご報告をと思いながら、PCの前に座ってはうとうと船を漕いでしまうようなありさまで・・・。 失礼いたしました。 コンサートの1週間くらい前からデュオの曲のリハーサルも始まり、新作の音楽作りもスタートしました。切羽詰まっていましたから1日8時間くらいのリハーサルはほぼ休憩なしの状態。その間は、緊張というより、興奮していたのでしょう、頭の中が全く休まらず、ベッドに入っても2時間くらいで目が覚めてしまい、睡眠不足が続きました。それでも、アドレナリンが異常に出ているのか、元気で、リハーサルはすごく楽しく、つらいということは全くありませんでした。 ニューヨークでは、お筝屋さんも楽器まわりのことを手伝ってくれる人もいません。たったひとり・・・。 でも、いろんな国でソロコンサートをしてきた経験がいつの間にか私を強くしてくれていたのか、鈍くなったのか(笑)不安というものはありませんでした。ただ、カーネギーホールで演奏することのなんともいえない幸福と興奮でわくわくしていました。 コンサート前日は、早めにリハーサルも個人練習も切り上げて、この日はたっぷり睡眠を摂ることができ、しかも当日の朝食は、カロリーたっぷり(笑)アメリカンブレックファーストを時間をかけてゆっくりいただくことができました。この睡眠と朝食がまるでガソリンのようにこのあと私を走らせてくれました。 朝9:00楽屋口に到着。車から筝や十七絃、立奏台やもろもろの荷物を舞台に搬入。まだ誰もいない舞台にしばし佇んでホールの空気をからだいっぱいに吸い込みました。そして、感謝しました。カーネギーホールに限らず、演奏前のこの静かな時間は私にとってとても大切な時間です。ここで行われてきた演奏会を想像し、響いた音を想像し、そして、今日来てくださるお客様を想像し、そのすべてを受け入れてくれるこの場に感謝し、対話する尊い時間・・・。 そして、おもむろに楽器の準備を始めます。筝は大事に布に包まれていて、紐を解いたり結んだり・・・そんな様子が外国の人にとっては珍しく見えるようで、よく" Your baby ? " と言われます。返事は、" Yes, my

もうすぐです!

2011-11-29T16:54:33+09:002011/11/29|

もうすぐ、カーネギーホールでのコンサート。お部屋にこもって練習する毎日ですが、休憩も兼ねてアパートメントのまわりをお散歩。 道の両側にある銀杏の木は、すっかり葉っぱが落ちて、歩道には落葉がいっぱい。そして、5時になるともう完全に暗くなって夜になるのだけれど、クリスマスの灯りでとても華やか。 昨日は、ニューヨーク在住のパーカッショニスト、ヴァレリー・ナランジョさんとのリハーサル。2時間半のリハーサルはあっという間に終わってしまいました。雑談もほとんど無く、ひたすら楽譜の読み合わせと呼吸合わせ。・・・というと、なんだかストイックな練習風景を想像されるかもしれませんが、" Oh! My Gosh !! " と、頭を抱えたり、もごもごと声を出して数えたり歌ったり・・。楽しい! 彼女はアフリカの打楽器を演奏する音楽家(今回の作品はアフリカの打楽器・ジャンべと筝のデュオなので、コロンビア大学の先生が彼女を紹介してくれました)。だからか、その掛け声というか、数える声がすごくかっこいい! 私も、なんか声を出してかっこよく数えて筝を弾いてみたい!と思いました。(笑) 明日は、作曲家の武智由香さんがニューヨークに到着され、一緒にリハーサルする予定。今回のコンサートのために彼女に新作を委嘱しました。 タイトルは「インドラの網」。東日本大震災への祈りをこめて、岩手の作家・宮沢賢治の詩をモチーフに書かれた作品です。かなしみと祈りと、そして慈しみ。最初の音、最初の1フレーズから胸がいっぱいになります。明日からは、南部やすかさんもドイツからニューヨークに戻り、本格的な共同作業の開始です。 コンサートのタイトル「JAPAN RISING」は、私が在籍しているコロンビア大学の中世日本研究所のバーバラ・ルーシュ教授が提案してくださいました。タイトルについて特にお話はしていませんが、たぶん、大震災のかなしみを乗り越え、復興し、さらにすばらしい未来へという希望と祈りをこめてつけてくださったのだと思っています。 こどもの頃からおもちゃがわりに遊んで楽器と接してきた私にとって、大学時代「日本」や「伝統」をいきなり背負わされた気がして、窮屈で、エキゾチズムがついてまわるのが本当に苦痛でした。 でも、今は、伝統のある楽器であることが、日本の楽器であることが、とても誇らしく思えます。そして、エキゾチズムであるかないかなんてどうでもよくて、ますます筝という楽器の魅力にひきこまれています。

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