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2008年10月30日 『アメリカツアー報告記(その4・最終回)』

すっかり続きが遅くなってしまってすみません・・・(汗)
あちらこちらを移動しておりましたので、こんなに遅くなってしまいました。

京都でのディナーコンサートも、楽しく終えることができ、お客さまからも「お筝っていろんなことができるんですね!とっても楽しくてわくわくしました!」というおことばをいただきました。
通崎睦美さんとの久しぶりのデュオも(たぶん6,7年ぶりと思われます・・・笑)すごく楽しくて、ずっとお会いすることもなく、もちろん合奏の機会もなく、リハーサルも前日にちょっとしただけですけれど、以前よりぴったり呼吸が合っているような気がして、感慨深かったです。
衣裳は通崎さんのコーディネートでアンティーク着物を着させていただきました!(感激!)
指揮者の井上道義さん、通崎さん、ブライトンホテルの林さん、アンサンブルのみんな、そして聴いてくださった皆様方、ありがとうございました!!!

前置きが長くなってしまいましたが、いよいよアメリカツアーも最終地・シカゴへとお話を進めましょう。

10月4日(土)
終日FREE。
3日連続の本番だったので、この日はニューヨークでしっかり休養・・・。

10月5日(日)
3日、ニューヨーク公演本番の後楽器は全て梱包し、またまた信頼する運転手さんにお任せして楽器たちはひと足先に陸送の旅へ。(おつかれさま。ありがとう。次はシカゴで会いましょう!)

お昼すぎの飛行機でニューヨークからシカゴへ向かいました。
ニューヨークでお世話になった皆様方、本当にありがとうございました!

この日は、シカゴの日本領事館で歓迎の晩餐会を開いてくださいました。
音楽がお好きで楽器の演奏もされる総領事ご夫妻とお話も弾み、ミシガン湖のほとりにあるすてきな領事館でゆるやかでおだやかなひとときをすごさせていただきました。
総領事ご夫妻のあたたかいお心遣いと、今回ご協力してくださった方々のお力添えに心から感謝いたします。

ミシガン湖がホテルの窓から見えました。
湖岸に沿って道路が走っていて、街路樹がぽつりぽつりと植えられています。オレンジ色の光が夜の街を照らします。
あまりに大きいから湖と一目ではわからないけれど、やっぱり海とはちがう静けさや閉じられた感じがあります。

この日は風が強くて、まるで声のように風の音が聞こえました。

明日はアメリカツアー最終日・・・おやすみなさい。

10月6日(月)
元気にめざめて、たっぷり時間をかけて、のんびりリハーサル。・・・と思ったら、ホテルに忘れ物をしてとりに帰ったり、結局バタバタになってしまいました(苦笑)

衣裳はショッキングピンクのドレス。今回、ワシントンの大使館でのレセプションはお着物でしたが、その後からのコンサートは日本でのリサイタルで着用した白のドレスを着ました。その同じデザインで色だけがショッキングピンクというもの。
背景がグレーや白の建築物だったので、ピンクはよく映えました。

シカゴでの即興演奏は水を使いました。ミシガン湖を見て、風の音を聞いて、どうしても水の音が使いたくなりました。

さて、本番です。
お客さまはやはり150~200人くらい。満員御礼。

シカゴの街。
ユニークなかたちの建築物がたくさんあって人々は忙しく暮らしているけれど、湖は全くそれとは無関係に沈黙をたたえています。暴風雨になるとこの静かな湖も荒れるのだろうけれど・・・
海にいて彼方を眺めて、それはいつも空へとつながっているような気がするけれど、湖にはきっと主のような何かが住んでいるようなちょっと不穏な雰囲気を感じます。
不穏というか、神秘的というか、妖しいというか・・・・

最後の曲を弾き終えたとき、無事終えられてよかった。という気持ちと、終わってしまった。という名残惜しい気持ちが同時に起こりました。
ぽつんとしました・・・
そうしておじぎをした瞬間に、お客さまが次から次に立ち上がってくださって、最後には全員スタンディングで拍手をしてくださいました。

ありがとうございました。
胸に手を当てて、目を閉じて、頭を垂れて、そんなどこかで見たようなかたちのおじぎが自然と出てきて、
きっとこのおじぎを最初にした人は今の私と同じ気持ちだったにちがいない。なんてあとから思いました。

何かを伝え合うこと。絆を結んでいけること。

帰国してから、日々を慌しくすごし、その中でまた考えることもたくさんあります。
夢のような感激と感動をいただいたアメリカツアーの余韻の中から「筝」について。「音楽」について・・・。
ひとつ抜けたと思ったら、また新しい壁が待ち受けています。
それは、自分自身という壁。

筝は龍。
龍は天と地を結ぶ架空の動物。
自在に飛んで、風を起こし、雨を降らせて、豊かな生命の種を呼び覚まして、いつの間にか雲の向こうに消えている・・・・・
龍の去ったあとには、真っ青な空と燦々と輝く太陽の光、そしてちいさな芽。

木陰が静かに揺れている・・・

そこにいつも戻って来ようと思います。
そこがいつでも拠りどころなのだと思っています。

(おしまい)

2008年10月20日 『京都へ』

18日は静岡音楽館AOIで箜篌を演奏してきました。(スケジュールにアップするのが間に合わなくてすみませんでした(汗)。。。)
とても音響のいいホールで、箜篌のように音量の出ない楽器でも繊細によく響きました。
ご案内として、後日スケジュールにアップしますね。

さて、そして、これから京都へ行きます。
指揮者井上道義さん、マリンバの通崎睦美さんとの楽しいコンサートディナー。
京都のブライトンホテルでは何度か演奏させていただいていますが、とても心地よくてやさしく、ゆったりと安らぐすてきなホテルです。

今回は20周年記念のイベント。プログラムはクラシックのアレンジが中心。
私のCD「ファンタスマ」にもクラシックの編曲したものを収録していますが、ただのコピーではなく、お筝でやってみるとまたこんな風におもしろくなるんだよ!という風に聴いていただけたら。と思います。

・・・というわけで、アメリカツアー報告記は少し途切れますが、つづきはもう少しあとで。

京都へ行ってきます!
紅葉にはまだちょっと早いですけれど、秋の京都(そういえば来月も京都に行きます!)にしばし滞在して、演奏して参ります。

今日の鎌倉は抜けるような青空がひろがっています。
秋の風情が漂っていて、風はもうすっかり秋です。

燃えるように紅葉する秋は、心を静かにかきたてますね・・・。

2008年10月19日 『アメリカツアー報告記(その3)』

終演後、みなさんに手伝っていただきながら、楽器をすべて梱包しトラックに積込み。
楽器(特に箜篌)が大型なためアメリカの国内線に積むのは難しく、楽器は陸送ということになったのです。
「おつかれさま。ニューヨークでまた会いましょう!」と楽器たちとしばしのお別れ。運転手さんは、歌舞伎の道具も運んだことのある頼もしい方だったので安心してお任せできました。

それから打上げ。到着したのはもう夜の10時をすぎていました。
ワシントンでお世話になった方々、ほんとうにありがとうございました。
忘れられないコンサートになりました。大切な宝物です!

10月3日(金)
朝から飛行機でニューヨークへ移動。

何があっても朝食はしっかり摂る!どんなときでもこれだけはちゃんと守っています。
朝食をしっかり摂らないと目が覚めなくて一日が始まらないんです。
・・・・・というか、朝食は楽しみのひとつですから!

で、ニューヨークに着いてとりあえずホテルにチェックインし、お昼ごはん。和食。ニューヨークで秋刀魚をいただきました!
そうして、荷物をまとめてすぐにホールへ。
楽器もまもなく到着。

大きな窓からはニューヨークの摩天楼が一面に見えて、まるで屏風に書かれた絵のよう!
とても立派な一室。
演奏する頃はきっと夕陽が落ちてきらきら輝く夜景に変わっていく・・・・想像しただけでワクワクします。

まずは楽器を出して、セッティング。楽器を置く場所を選び、即興演奏のアイデアを練ります。
静かに窓の外を眺め、楽器に触れ、どんな音を使おうか、どんな感じにしようか・・・その場から感じられることを音にしたい!
ニューヨークのここで今できること。今しかできないこと。
ワシントンからニューヨークに来て、街の音はあきらかにちがうし、人々の歩く速さだってちがう。人々の表情、お店にかかる看板。高い建物に囲まれた青い空・・・・・。

これで行こう!音を決めて他の楽器のチューニングを済ませたら、もう時間がなくて、結局リハーサルは無し。ぶっつけ本番。

ワシントンと同じくらいの数のお客さま。
演奏を始める頃、日は西に傾いていました。
演奏しながら、向こう側にニューヨークの風景が見えて、徐々に夜景が輝き出すのが見えます。

ニューヨークはどんな感じ?
ん・・・ことばで表現するのは難しいけれど、私はやっぱり「夢みる街」だと思います。
それが都会にある独特の活力というものかもしれないけれど。
もちろん競争は熾烈で、挫折する人もたくさんいるでしょう。だけど、たくさんの出会いがあって、新しいものが生まれる若さがあります。
「若さ」って年を重ねて失くすものじゃないと最近思うんです。「若さ」って新鮮であることじゃないかしら?

ニューヨークのスピードは速い。クールで、キレがよくて、明るくて、ピリッとした緊張感のある大都会。
自分自身にちからをつけて、競争に勝ち進んで、夢をかなえていく・・・とてもすてきなことだと思います。
競争は悪いことじゃない。自分を磨くことができるなら・・・。
音楽は競争じゃないけれど自分を磨きたいと思う気持ちは同じ。
ダメかもしれない・・・でもチャレンジしてみたい!
もしダメでもチャレンジした自分はなかなかすてきなんじゃないかと思えます。

それがきっと「若さ」なのかな?

話が演奏とは全くちがう方向へ行ってしまいました(笑)

演奏後、アンコールの拍手をいただいてうれしかった!
「さくら」を弾きました。ニューヨークは日本人の方々が多くて、終演後、自分が日本人であることをあらためて感じていろいろ考えさせられましたと言ってくださった方が何人かいらっしゃいました。

「さくら」も着物も昔はあまり好きではありませんでした。
いかにも「日本」をアピールしているみたいでイヤでした。だからその頃の私はきっと筝という楽器にもなんとなくコンプレックスを持っていたのかもしれません。
エキゾチズムだけで評価されるのがなんとなく悔しい気がしていたのでしょう。

今は、「さくら」も着物も誇れるものだと思っています。
「さくら」であろうと着物であろうと、それを弾いたり着たりする人によってどんな風にも変わるものですから。表面的にしか捉えられなかったとしたなら、それは私自身が浅薄だということです。
筝という日本の楽器はすばらしいと自信を持って言えます。
そこから先は演奏家である私自身の問題ですから。

どこで演奏するときも向かう気持ちは変わらないけれど、まずは敬意をはらって、何かを生み出したい。そんな風に思うようになりました。

つづく

2008年10月18日 『アメリカツアー報告記(その2)』

ワシントンDCから今回のソロコンサートツアーはスタート。
機内でたっぷり眠ったからか、気が張っているからか、時差ボケはまったく無し。
固まっているように思えた楽器たちも音を少しずつ鳴らしているうちに、だんだんホールになじんできました。
なんというか、体温があるという感じ・・・ぬくもりのあるふくよかな音になってくるのですね。

進行やプログラムの中間でのスピーチについて打合せ。
自分の名前とお礼の気持ち、英語が苦手なので通訳の方にお手伝いしていただくという主旨のことを最初に簡単な英語で言い、その後に私が自分の文章を日本語で読み通訳していただくことになりました。

さて、準備も終え、さすがにそれほど食欲はないものの、お菓子をいただいて、本番に臨みます。
プログラムは、甦る五つの歌より1~3(沢井忠夫作曲)、 箜篌のための「蝉の法」(三輪眞弘作曲)、鳥のように(沢井忠夫作曲) ~スピーチ~ 即興演奏(西陽子作曲)、鹿(のうた(高橋悠治作曲)、楽(沢井忠夫作曲)。

舞台は、ほのあかり。
楽器(筝2面、十七絃1面、 箜篌)はすべて舞台上に並べられていて、その中を1曲演奏しては移動して行きます。
150~200ほどの客席は満席。

ひとつの「書」を一気に書きあげるように。
森の中のちいさな泉に石を投げ入れるように。
髪をなびかせて草原を自転車でかけぬけるように。
涙をそっとぬぐうように。

音をひとつひとつ・・・とてつもなく優しい気持ちで、とてつもない激しさで、切なく、いとおしく、名残を惜しむように手から放っていきます。

最後の曲を弾き終えて、静かにおじぎをしました・・・・

たくさんの拍手が沸き起こって、客席の中央でひとりの少しふっくらとした男性が立ち上がってくださいました。
その途端に、ひとり、ふたり・・・・そして、波のようにお客さまが立ち上がって・・・・ついには全員がスタンディングで大きな大きな割れるような拍手を送ってくださいました。
頭の上で拍手をしてくださっている方もいて、拍手はずっとずっと鳴り続けました・・・・・

夢じゃないかしら?ほんとにこれは現実?
涙で目がかすんだけれど、あまりに驚きすぎて涙を流すことすらからだが忘れてしまったようにしばし呆然としていました。
信じられないほど感激したときというのはからだもこころも止まってしまうのですね!

しばらくして我に返り、出たことばは「Thank you very much. I'm very happy....... 」。
もう少し何か気の利いたことを言えればよかったのかもしれません、でも、これ以上のことは言えなかったし、これが精一杯でした。

「ありがとう。私はとても幸せです・・・」

アンコールを弾いたあと、コンサートは終了。
熱病にかかったようにその熱気と余韻が私のからだを包んでいました。

つづく

2008年10月17日 『アメリカツアー報告記(その1)』

ただいま!無事帰国しました!
といっても随分前、8日には帰国していたのですけれど、そのあとも本番が続いていて(クローズなものでしたのでご案内できませんでした。)・・・失礼いたしました。

今思い出しても夢のような旅でした。
私の演奏家としての歩みの中に、生まれて死ぬまでの道に、ひとつの碑として深く刻まれる演奏旅行でした。

今回、このツアーが実現するために、本当にたくさんの方々のおちからをいただきました。
それはもうどんな風にお礼を申し上げても足りません。
ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
心から、ありがとうございました。

9月30日(火)
成田空港より出発。
日本から持ち出す楽器は、筝2面、十七絃1面、楽器を置く台3台、そして箜篌1台。
出国の際、箜篌が大型の検査台も通らないほど大きなものだったので積込みぎりぎりになって呼び出しを受け、私が立ち会ってその場で梱包を開き検査することになりました。
そのせいで(たぶん・・・)飛行機の出発時刻が少し遅れたような・・・ご迷惑をおかけしました(汗)

そんなこんなでギリギリまでバタバタとしていたにも関わらず、飛行機の中では相変わらずの爆睡。
いつもながら離陸すら知らず、もちろん映画鑑賞もなし。というか、お食事のとき以外はずっと眠っていました。

ワシントンに到着して会場を下見。楽器は無事!(ひと安心。)
お天気もよく、いい雰囲気。ワシントンは緑も多くて、さわやか。

10月1日(水)
ワシントンDCの日本大使館でアレクサンドラ・デボグレーブ女史の詩集出版記念と私の演奏。 
政財界やアメリカの文化の中心にいらっしゃる方々がお集まりになっていて、日本の方はほとんどいらっしゃいませんでした。
私が演奏する場所の背景には、ガラス越しに見事な日本庭園が見えて、天井の高い大使館に筝の音はとてもよく響きます。

こんな晴れやかで華やかな場所で演奏できることを光栄に感じながら、同時に日本という国を思いながら静かに演奏を始めました。

建物の外で鳴っている音が聞こえるほどお客様が耳をすませてくださっているのが伝わってきます。

筝の音は、空気を動かして波を作っていきます。
時には心に沁みわたるのを待つようにゆっくりと間をおいて、時にはたたみかけるように激しく・・・。
この日は着物を着て沢井先生の作品「楽」を演奏しました。

終わったあと、どれだけたくさんの方々に声をかけていただいたことでしょう。
すばらしかった!美しかった!感動しました!あなたの手はどうなっているの?どれくらい弾けばそんな風に弾けるようになるの?・・・と、そんな風に100人以上の方々に声をかけていただいたと思います。

手を引かれて歩いていたある小柄な老婦人に手を握られ、抱きしめられて、「すごくよかったわよ。絶対今日のことは忘れないわ。あなたの今日の演奏はすばらしかった。でも、それはあなたの音楽がきれいだっただけじゃない。あなたの心がきれいだったのよ。」と言ってくださいました。

私も一生忘れません。そして、今の気持ちを一生忘れないで努力します・・・

10月2日(木)
お昼前にホールに入って、セッティングや照明を決め、サウンドチェック。
楽器たちも飛行機の移動で疲れているので、音をゆっくり鳴らしつつ、ホールになじんでいけるように調整していきます。
そして、即興演奏をどうしようかな・・・。

誰もいないホールでたったひとりですごす時間。空っぽの客席と、一緒に海を渡ってきた楽器たち。
このひとりの時間がとても大切で、大好きな時間。
ことばはないけれど会話はある。ひとりだけれどひとりじゃない・・・そう思える時間です。

プログラムは全曲ソロ。
1時間半、中間に少しスピーチをはさむものの、舞台からはけることなくずっと演奏し続けるというのは音楽のコンサートではほとんどないことです。
チューニングも含め舞台裏や幕裏でやるべきこともすべて舞台上でやりつつ進行していくことは、自分自身だけでなく聴いてくださる方にも集中力や心地よい緊張感が必要で、また逆に力が抜けてリラックスした状態でないとつらいものになってしまいます。

さて、いよいよ始まります!

つづく


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