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5月13日(金)
そっかあ。今日は13日の金曜日なんだ。とぼんやり思いながら和歌山から難波まで電車に乗り、地下街を歩いて国立文楽劇場に向かう。明日の公演のためのリハーサル。日本橋の駅には、文楽劇場を示す矢印があっちこっちにあって、明日のポスターも貼られている。地上に出ると、いかにも大阪らしい雑然とした街。しばらく歩くと、いくつもののぼりがあがった建物が見えてきた。玄関には堤燈がたくさん吊るされている。
楽屋口に向かう。警備のおじさんに聞いてエレベーターを上がると楽屋の受付があって、いきなり神棚があった(東京の国立劇場にも確かあった)。お酒が供えられている。私も手を合わせ、一礼して中に入る。楽屋の廊下には舞踊のひとたちの道具がたくさんあって、着物を着た関係者の人たちでいっぱい(明日は舞踊と音楽の公演だから当然!)。いつも通りGパン姿で、ゴロゴロキャリーケースを転がして通過するが、なんとなく場違いな雰囲気。各楽屋には「○○さん江」と書かれたはなやかな暖簾がぶらさがっている。うわぁ、ますます場違い!
自分の名前が貼られたお部屋に到着。まずは、楽器が無事到着していることを確認してほっとした。梱包を解いて、楽器を出し柱をかける。楽器に事故もなく安心。舞台からは華やかな長唄の音が聞こえてくる。おめでたい曲の賑わい。制作の田村さんに会って挨拶を交わす。「私、衣裳、洋服で黒いシンプルなドレスなんですけど。。。」と言うと、「まあ、どちらにしても浮いてるからいいんじゃない。」と苦笑い。。。「えっ?まずかった?ど、どうしよう。。。でも、衣裳これしか持ってないからもうどうしようもないし。。。」衣裳を着用してゲネプロ。残響が少ないからつい力んでしまうし、どうしてもはやく次の音を出したくなってスピードに頼ってしまう。うーん。。。どうしたものか。と悩んでいるうちに終わってしまった。明日はお客さんが入ってもっと響きにくい?でも、どんなホールも本番の方がなぜかよく響く。音が吸収されているはずなのに、不思議だなあ。。。。
ゲネプロ終了後、やっぱりなにもかも浮いてると言われ、逆に開き直る。でも、浮くことがわかっていながらこの公演に呼んでくださった田村さんにはほんとうに感謝の気持ちでいっぱいです!
夜、篳篥の中村仁美さんや雅楽の方たちと田村さんと道頓堀界隈で食事。串揚げ、どて焼きなどなど。ビールも少し。文楽の人間国宝と言われる方々の舞台裏の話を聞く。85歳であの重い人形を1時間半操り続ける気力。終演後の楽屋ではもう倒れこむようにくたくたで起き上がれず、明日は舞台に立てるかどうかわからないと毎日思いながらも舞台に立ち続けていらっしゃるのだそうだ。それはもはや体力といえるものではなく超人的な気力によるもの。舞台にかける執念と気迫。話を聞いているだけで圧倒される。自分の甘さが恥ずかしくなる。でも、そういう尊敬すべき先達がいてくださって、その芸や生き方のすさまじさに何か具体的によくわからなくても指針を与えてもらったような気がする。
明日は本番。700名収容の大きなホールで暗譜で25分間ソロで弾くなんてことはここ最近なかった。どんなホールでもライブハウスでも気持ちが変わるわけじゃないけど、ひとりの人に伝えるのと700人の人に伝えるのはやっぱり違う。音の大小じゃない。小さな声じゃ伝わらないということだ。
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